不祥事が起きた場合、まず、スポーツ団体として、迅速に事実関係を把握するため、不祥事を起こした本人や関係者から詳細な事情聴取を行います。
もっとも、スポーツ団体内部の役員等のみが調査を行うと、従来の人間関係等から、公正・中立な調査を期待できないことも考えられます。そこで、例えば、弁護士や大学教員など、スポーツ団体外の有識者が関与して調査を行うことを検討すべきでしょう。事案の内容、規模によっては、外部の有識者による第三者委員会などを構成する必要もあります。
調査の結果を踏まえて、不祥事が起きた原因の究明や、再発防止のための方法などを検討することも重要です。
調査の結果、問題となる不祥事の社会的非難の程度や事案の性質によっては、スポーツ団体として、不祥事を起こした本人に対して処分を行うことになります。
スポーツ団体による処分は、処分の対象者にとって著しい不利益をもたらすので、本人から直接言い分を聞いた上で、本人に弁明の機会を与える必要があります。
また、処分を決定する上で重要なことは、問題となっている行為と処分の均衡です。不祥事の内容に比べて、過度に緩やかな、あるいは過度に厳しい処分を課すことは、処分の適正さに疑いを生じさせることになりかねません。処分を決める上でも、調査の場合と同様に、スポーツ団体外の有識者の関与を検討すべきでしょう。
そして、スポーツ団体が処分を課す際には、処分の対象となった者に対して、処分の内容とその理由を直接説明します。
当事者が処分に対して不服がある場合には、処分の適法性・妥当性について、公正・中立な立場にある第三者の判断を仰ぐ機会が与えられる必要があります。処分を通知
する場合には、あわせて、処分に対する不服申立てができること、そしてその手段についても説明すべきです。不服申立手続として、日本スポーツ仲裁機構(JSAA)を利用する場合は、こちらのページを参照してください。
スポーツ団体の内部における不祥事の発生を防ぐためには、常日頃から、次のような方策を講じることが大切です。
(1) 関係者に対する教育啓発活動
スポーツ団体の役員やコーチ、監督等指導者らを対象とした定期的な研修会等の実施や、パンフレットなどの情報資料の配布などが考えられます。
(2) 各スポーツ団体におけるガイドラインの作成
なお、公益財団法人日本体育協会に加盟しているスポーツ団体には、「公益財団法人日本体育協会及び加盟団体における倫理に関するガイドライン」に基づき、倫理や社会規範に関して必要な規程の整備を図ることが求められています。
(3) 倫理委員会や相談窓口の設置など
法律の専門家やカウンセラーなど、スポーツ団体外の第三者の関与も検討すべきでしょう。
スポーツ団体は、不祥事に関する社会からの信頼回復のため、対外的な広報を行う必要があります。処分内容、不祥事が起きた原因と、それを踏まえての再発防止策、スポーツ団体としての謝罪の表明などを広報することが考えられます。
事実関係を公表する場合には、処分の対象者や被害者のプライバシーに十分に配慮する必要があります。また、刑事事件に発展し、捜査が進行中の場合には、捜査機関から、情報を公開しないように求められる場合もあるでしょう。