ドーピングはフェアプレーの精神に反する行為であり、競技者や当該競技の社会的な信用が損なわれるおそれがあります。よってスポーツ団体には、スポーツ団体自身がまずドーピング規制について十分に理解し、ドーピング防止のために必要な体制を整備し、それを競技者や競技関係者に周知していく必要があります。
なお、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)加盟団体は、日本ドーピング防止規程(JADA 規程)に準拠したドーピング・コントロールを行いましょう。
近年のドーピング防止規則違反事例の中には、禁止物質と知らずに服用したもの、治療目的使用に係る除外措置(TUE)の申請を怠ったものなど、競技者が普段からドーピング規制に注意していれば避けられたと思われるケースも少なくありません。 このような違反リスクから競技者を守るために、スポーツ団体としては以下のようなサポートを行うことが考えられます。
(1) 競技者に対する周知・啓発
まずは競技者に対して定期的に講習を実施したり、読みやすい説明資料※ 1 を配布するなどして、禁止物質や検査方法などの基礎的な知識の周知を徹底すべきです。コーチ、監督などの競技者支援要員に対する周知・啓発も必要でしょう。
※ 1 無償で利用できる資料として、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)発行の「ドーピング防止ガイドブック」があります。
(2) 関連する規程への競技者からのアクセス確保
ドーピング・コントロールに関する規程としては、JADA 規程(禁止表を含む)、スポーツ団体独自の規程やガイドライン等があります。これらの規程については、スポーツ団体が率先して、ホームページなどに掲載し、競技者やコーチなどの競技者支援要員らが常に最新のものにアクセスできるようにする必要があります。
(3) チームドクター等によるサポート体制の拡充
ドーピング・コントロールに知見のある医師(薬剤師)をチームドクター(薬剤師)として確保することや、競技者が容易に相談することのできる体制(ホットラインの設置・周知など※ 2)を整備することが不可欠です。また、チームドクターでない医師や海外の医療機関にかかる場合の受診マニュアルを作成するなど、競技者が安心して必要な治療を受けられるような配慮も大切です。
※ 2 無償で相談できる仕組みとして日本薬剤師会「ドーピング防止ホットライン」があります。
スポーツ団体がドーピング防止規則違反を理由に自ら処分を課す場合には、まずは競技者本人に弁明の機会を与えなくてはなりません。また、処分通知においては、処分の理由を明記するとともに、不服申立ての方法についても併せて記載することも必要です。これらの手続がおろそかにされると、競技者に制裁の範囲を超えた重大な不利益を課すことになりかねません。不服申立てに関し、日本スポーツ仲裁機構(JSAA)を利用する場合についてはこちらのページを参照してください。また、JSAA発行の「ドーピング仲裁ガイド※ 3」も参考になります。なお、JADA 加盟団体についてはJADA規程に基づく手続を行いましょう。
競技者のドーピング防止規則違反が発覚した場合、スポーツ団体はその説明責任の一環として、かかる違反の事実、違反者に対する処分の内容とその理由を、処分対象者のプライバシーに配慮した適切な範囲で公表する必要があります。スポーツ団体運営の健全化という観点からは、必要に応じ具体的な再発防止について検討し、それを公表することも望ましいでしょう。
※ 3「ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則」による仲裁については、「覚えておきたい! ドーピング仲裁ガイド!!」を参照してください。