理事会を設けているスポーツ団体において、理事会を構成する理事は、スポーツ団体の業務についての意思決定を行うだけでなく、その意思決定に基づいてスポーツ団体の業務が適切に行われているかをチェックするという重要な役割を担っています。そこで、このような重要な役割を果たすにふさわしい構成の理事会にする必要があります。
スポーツ団体には、社会からの注目度に応じて、競技者、ファン、メディア、地域社会、スポンサーなど多くの関係者が関与しています。スポーツ団体運営にはこのような複雑で多様な関係者への配慮が必要となります。スポーツ団体が社会からの信頼を得るには、このような多くの関係者を含む社会の多様な意見を踏まえ、バランスのとれたスポーツ団体運営を行うことが重要です。 そのためには、スポーツ団体の理事構成も多様であることが求められるので、次のような観点から理事の任用を考える必要があり、これらを踏まえた任用基準を定めることも有用です。
(1) スポーツ団体内における多様性 ~年齢、性別等
競技者・元競技者を中心とするそのスポーツ団体内部の人材から選ばれる理事については、年齢構成、性別、経歴、種目の違い、出身母体等が偏らないようにすることが重要です。スポーツ団体内部には、このような要素が異なる競技者・元競技者が幅広く存在しますので、これらの一部のみを代表する理事構成では、その他の意見を十分に踏まえることができない可能性があります。そこで、上記の点を考慮してバランス良く理事を任用することで、スポーツ団体内部の多様な意見を踏まえた意思決定や業務執行のチェックを行うことができるようになります。
(2) スポーツ団体外の人の多様性 ~スポーツ団体外からの理事の任用
また、理事全員がスポーツ団体内から任用されると、スポーツ団体の常識や慣行、さらにはスポーツ団体内の人間関係への配慮から、客観的に見るとバランスを欠く意思決定や業務執行が行われる可能性があります。これを避けるため、スポーツ団体外の関係者(ファン、メディア、地域社会、スポンサーなど)を代表する人材の任用も検討すべきでしょう。
(3) 専門性・客観性の確保~有識者の任用
スポーツ団体運営でも、経営・法務・財務等の専門的・客観的な視点が必要になります。そこで、有識者(弁護士、税理士、会社役員等、できれば複数名)を理事として任用することも考慮すべきです。有識者が、それぞれの専門的知見に基づいて意思決定に参加し、専門的・客観的な視点から業務執行をチェックすることにより、スポーツ団体運営の適正を確保し、社会からの信頼に応えることができるようになります。
スポーツ団体が新たな理事を任用したときや、任用基準を定めたときには、それをホームページなどで開示しましょう。このような情報を社会に発信することで、より社会からの理解を得ることができます。また、社会状況の変化に対応するために、理事の任用基準についても定期的に検証し、必要に応じて改定することも有用でしょう。