そもそもなぜ今、スポーツ団体には「ガバナンス」が必要だと言われ始めたのでしょうか。
これまでスポーツ団体の運営では、スポーツの強化、普及という各団体の目的に従って、ご尽力されてきた成果もあり、特に大きなトラブルも生じて来なかったと思います。
ただ、以前と比べて、現在のスポーツ団体には大きな社会的責任があると指摘されるようになってきています。このため、スポーツ強化、普及に尽力するだけでなく、トラブルのない、社会から信頼されるスポーツ団体を運営していくためには、「ガバナンス」が必要だと言われ始めました。具体的に説明していきましょう。
(1) スポーツ団体の大きな社会的責任
今、多くのスポーツ団体に大きな注目が集まっています。野球やサッカーといったプロが存在するスポーツだけではなく、以前であれば、注目されなかったスポーツもどんどんテレビ、新聞や雑誌に登場するようになりました。
ただ、このように大きな注目が集まる一方で、そのスポーツを統括される皆様のスポーツ団体の周りでは、競技者や指導者だけでなく、テレビ、新聞や雑誌、スポンサー、そして、スポーツに注目する全国のファンなど、関係する人たちの輪がどんどん広がっていきます。以前であれば注目されなかったスポーツ団体の判断や発表に大きな注目が集まり、その影響は社会全体に広がるようになりました。
スポーツが注目されることは非常に喜ばしいことですが、一方で、このような影響力の大きさから、スポーツ団体の判断や発表には、非常に大きな社会的責任が伴うようになっています。
このような社会的責任は、スポーツ団体だけではなく、様々な組織に必要と指摘されており、平成22 年11 月には、国際標準化機構(ISO)から、あらゆる団体の社会的責任に関する国際規格である「ISO26000」が発表されるなど、近年大きな注目を集めています。
(2) 社会から信頼を得ること ~社会は「身内」ではない視点の重要性
スポーツ団体が、この大きな社会的責任を果たしていくためには、社会から信頼されるスポーツ団体運営を行っていく必要があります。
これまで注目されることが少なかった時は、競技者や指導者などの、いわば「身内」を考えて、先輩後輩の関係や、指導者と競技者という密接な関係に基づくスポーツ団体運営をすることが可能でした。しかしながら、注目が大きくなった今では、スポーツ団体に関係するのは、競技者や指導者だけではありません。テレビ、新聞や雑誌などのメディア、スポンサーのみならず、いろいろな考えを持っている人々を含む社会全体を意識する必要が出てきています。
そこで、この社会全体が納得し、社会から信頼されるスポーツ団体運営を行うために、「ガバナンス」が必要であるといわれるようになってきているのです。
(3) ボランティアだとしても「ガバナンス」は必要
また、スポーツ団体を運営する方々の中には、スポーツを愛し、引っ張ってこられた責任から、ボランティアで、スポーツ団体運営に携わっておられる方も多いことでしょう。今までお付き合いされてこられた方であれば、ボランティアで一生懸命取り組まれていることをご存じであり、ボランティアで頑張られたことに対する温情が生まれるかと思います。
しかしながら、社会的責任が問題になる場面においては、ボランティアであるかないかも知らない社会全体を相手に対応をしなければなりません。たとえボランティアであったとしても、スポーツ団体の「ガバナンス」を意識する必要があるのです。
スポーツ団体を取り巻く関係者とスポーツ団体からの影響力