不祥事が発生した場合には、まず、事実関係を把握し、原因を究明して、判明した事実関係及び原因に基づいた適切な対応が必要となります。
不正経理のようにスポーツ団体内部の役員等による組織的な不祥事の場合、スポーツ団体から独立した外部の有識者(弁護士、公認会計士、税理士等)や、そのような外部の有識者による第三者委員会に調査を委ねる必要もあります。
なぜなら、組織的な関与があり、役員等との上下関係、従来の人間関係などにより十分な調査ができない可能性が高く、調査結果に対して社会からの信頼が得られないからです。
調査によって判明した事実関係及び原因に即して、必要かつ適正な処分を採りましょう。
(1) 不正経理に関与した役員、職員の処分
不正経理のようなスポーツ団体の役員、職員としての重大な責務に違反するような行為を行った役員、職員に対しては、解任、解雇という処分を検討する必要があります。
(2) 不正経理に関与した役員に関する刑事告訴
スポーツ団体の資産の使用が、業務上横領、背任などの犯罪行為となる場合には、スポーツ団体として、不正経理に関与した役員、職員を刑事告訴することも検討する必要があります。
(3) 流出した金銭の回収
スポーツ団体の資産はスポーツ団体運営に使用すべきものです。スポーツ団体から不正経理に関与した役員、職員に対して損害賠償請求を行うことで、不正経理によって流出したスポーツ団体の資産を回収しなければなりません。
不祥事が発生し、その事実関係及び原因が判明した後には、今後同じような不祥事を起こさないように対策を講じる必要があります。
(1) 役員、職員自らによる勉強会等の実施
① スポーツ団体の資産は役員、職員の資産ではないことの再認識
当たり前のことですが、スポーツ団体の資産はスポーツ団体の目的のために支出されるものなので、スポーツ団体の資産を役員、職員の個人目的のために支出することは許されません。例え、スポーツ団体の強化や資金繰りが苦しいなどの理由で、役員が私財を投入していたとしても、それはスポーツ団体の資産になります。
② 役員はスポーツ団体から業務執行を委任されている法的責任者であることの再認識
役員は、スポーツ団体からスポーツ団体の業務の執行を委任されているので、スポーツ団体に対して役員として、法律上重大な責務を負っています。もちろん法的に、不正経理に関与した役員はスポーツ団体に与えた損害を賠償しなければなりません。スポーツ団体の役員は、単なる名誉職ではなく、このような重大な法的責任が課される仕事であることを再認識すべきでしょう。
(2) スポーツ団体から独立した外部の有識者による経理の調査
スポーツ団体の監事に公認会計士や税理士などの外部の有識者を置くことはもちろんのこと、スポーツ団体から独立した外部の有識者による、外部からの経理の調査を行うことも必要でしょう。
なぜなら、スポーツ団体内部の方がなっている監事による経理の調査では、役員同士の従来の人間関係への配慮等から、調査の実効性が確保できないからです。
スポーツ団体は、まず社会に対して、不祥事によって社会一般に対して迷惑をかけたことを謝罪するのが良いでしょう。そのうえで、不祥事の原因の調査経過、不正経理の事実関係及び究明された原因、スポーツ団体として採った対応、再発防止等について説明し、スポーツ団体としての信頼回復に努める必要があります。