仲裁判断

 

仲裁判断(2013年11月26日公開)
仲裁判断の骨子(2013年11月11日公開)


  

仲裁判断

仲 裁 判 断
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
JSAA-AP-2013-023

申   立   人 :X

申立人代理人 :弁護士 根本 良介

被  申  立  人:公益財団法人 全日本スキー連盟

被申立人代理人:弁護士 五十嵐 敦

        弁護士 大久保 和樹

 

主  文

 

本件スポーツ仲裁パネルは次のとおり判断する。

(1)申立人の請求をいずれも棄却する。

(2)申立料金5万円は、申立人の負担とする。

 

理  由

 

第1 当事者の求めた仲裁判断

 

1 申立人は、以下のとおりの仲裁判断を求めた。

(1)被申立人が行った2013年10月15日付「2013/2014シーズンのオリンピック出場枠選考期間内のWC男子出場選考について」と題する決定の取消を求める。

(2)2013年-2014年シーズンのFISワールドカップスキークロス競技第1戦から第8戦については、申立人に出場する権利があることの確認を求める。

(3)仲裁費用は、被申立人の負担とする。

2 被申立人は、以下のとおりの仲裁判断を求めた。

(1)申立人の請求をいずれも棄却する。

(2)仲裁費用は申立人の負担とする。

 

第2 仲裁手続の経過

 

別紙に記載のとおり。

 

第3 事案の概要

 

 本件は、被申立人がFISフリースタイル・スキー・ワールドカップのスキークロス競技に関し、2013年10月15日付「2013/2014シーズンのオリンピック出場枠選考期間内のWC男子出場選考について」と題する書面において、「(1)12月に行われる第1戦(CAN)の出場権はA選手、第2戦(CAN)の出場権は申立人にあるものとする、(2)第3戦以降の出場権は、第1戦、第2戦のレースで、上位の順位を獲得した者が得るものとする、(3)上記WCについては怪我等により優先権を持っている選手が出場しない場合は、FISポイント上位選手が出場権を得るものとする」との決定(以下「本件決定」という。)を行ったことに対し、スキークロス選手である申立人が本件決定の取消を求めるとともに、ワールドカップ第1戦から第8戦(以下総称して「本件試合」という。)につき申立人が優先して出場する権利があることの確認を求めた事案である。

 

第4 判断の前提となる事実

 

1 当事者

 

 申立人は、フリースタイル・スキー競技の内、複数の選手が同時にスタートし、バンク・ウェーブ・ジャンプ等の障害をクリアしながら、着順を競うスキークロス競技の選手であり、同種目のバンクーバーオリンピックにも出場経験がある選手であって、スポーツ仲裁規則第3条2項に定める「競技者」に該当する。

 被申立人は、日本国内のスキー競技の普及・発展を図る目的の公益財団法人であり、スポーツ仲裁規則第3条1項に定める「競技団体」に該当する。被申立人は、主に総務本部、競技本部、教育本部等によって構成されており、ワールドカップ代表選手の審議決定は競技本部内のフリースタイル部によってなされる。

 被申立人の会員登録規程第4条4項に「前条第1項の会員については、本連盟の決定に対する不服申立ては、日本スポーツ仲裁機構の「スポーツ仲裁規則」に従って解決されるものとする。」との規定があるので両当事者間に仲裁合意があると認められる。

 

2 事実の経緯

 

(1) FISポイントとワールドカップの関係について

 まず、FISポイントとは、国際スキー連盟(International Ski Federation 以下「FIS」という。)が定めるポイント制度を意味し、選手はポイント決定(年に数回集計・決定される)前の一年間の同連盟公認大会に出場することによりポイントを獲得し、獲得ポイントに基づき順位(ポイントリスト)を決める方式が採用されている。

 次に、ワールドカップの出場権は原則として国ごとに出場枠(一カ国から何名の選手が出場できるか)を与えられる。国ごとの出場枠は、前シーズンの終了時におけるFISのポイントを基準に、FISが定めるポイント数を超える選手の人数に応じて、当該選手が属する国に対し与えられる(乙5)。なお、必要ポイント数は、2012年-2013年までのシーズンは1枠目が50ポイント、2枠目以降が100ポイントであったところ、2013年-2014年シーズンから1枠目が100ポイント、2枠目以降は125ポイントに変更された。

 また、各国に与えられた出場枠について、具体的にどの選手が出場するかは各国のスキー連盟(日本でいうところの被申立人)の裁量に委ねられている。これまで、日本の出場枠の獲得に貢献した選手(前シーズンの終了時におけるFIS必要ポイント数を超過した選手)が必ず翌シーズンのワールドカップに出場したわけではない(乙4)。

2013年-2014年のワールドカップ出場枠は、2013年6月末時点でのポイントリストに基づき決定されたところ、同リストにおいて、日本人選手でFISのポイントが100ポイントを超えていたのは申立人のみであったことから、日本に2013年-2014年シーズンのワールドカップ出場枠が1枠与えられた。

 

(2) 被申立人は、2011年-2012年のスキークロス競技におけるワールドカップ選手選考基準として、1大会における日本人選手の出場枠が超過した場合、以下の順に判断することとした(乙7)。

①強化指定選手
② FISポイント(スキークロス)が高い選手
③ FISポイント(アルペン)が低い選手

 

(3) 被申立人は、2012年-2013年のスキークロス競技におけるワールドカップ選手選考基準として、以下の順に判断することとし、この基準を日本国内の有力選手らに告知した(乙8の1、及び8の2)

 国別出場枠と選手のコンディションに応じてFIS50ポイント以上を獲得している選手で以下の順序で優先的に出場できる。該当者が複数いる場合は、上位者を優先とする。

① 強化指定選手。
② 100ポイント以上取得している選手。
③ 100ポイント以下の選手は1名しか出場できないので、50ポイント以上100ポイント以下の最上位の選手。
④ コーチ推薦の選手

 

(4) 被申立人は、2013年6月、フリースタイル部の下部組織に位置づけられる強化委員会において、本件試合における選手選考基準として、下記基準を確認し(乙1)、同月に行われたクロス競技の強化合宿において口頭で申立人を含む合宿参加選手に説明した。

 国別出場枠と選手のコンディションに応じてFISポイント100以上を獲得している選手で以下の順序で優先的に出場できる。該当者が複数いる場合は、FISポイント上位者を優先する。

① 強化指定選手
② FISポイント100以上の選手でコースを完走出来る技術がある選手
③ 強化委員会が推薦し、部長が承認した選手

 

(5) 2013年8月初旬、被申立人フリースタイル部の強化委員であり、コーチでもあったB氏は申立人との間のLINEメッセージにおいて、下記のやり取りを行った(甲1)。

2013年8月2日のトーク履歴の抜粋

21:17 B氏 枠の優先順位に付いては体力測定の合宿の時に説明した通り大会が開催される時に所持しているポイント優位者を優先としてエントリーを行います。

21:19 B氏 Cさんに説明したのは、ワールドカップ初戦が行われるまでの有効ポイントをゲット出来るレースがオーストラリア、またはチリのレースのみなので、事実上今回オーストラリアで所得するポイントがかなり重要になると云うこと。

21:33 B氏 確かに、もしXが夏のレース後に日本人のポイントランキングで最上位で無くなった場合、Xの獲得したポイントで枠が得られているのは事実なので、Xに不満が生じることは理解出来ます。しかし、チームとして考えた場合、ポイントの最上位者をエントリーすることが正しい選択なのではないでしょうか?

21:35 B氏 ちなみに、オーストラリアの順位は別にどうでも良いです。ポイントランキングで判断致します。

2013年8月3日のトーク履歴の抜粋

8:22 B氏 お疲れ様です。まず、ワールドカップの権利についての昨夜のやり取りで私の認識に誤りがあり、Xさんに混乱を招いてしまったことに対して謝罪しなければなりません。昨夜は枠をチームで使う方向と云う話をしましたが、そのことに関して訂正致します。

8:32 B氏 ワールドカップの出場権において、枠を獲得したXさんに枠使用の優先権があります。

8:34 B氏 昨晩は、Xさんに不快な思いをさせ、混乱を招いてしまい、すみませんでした。

 

(6) 本件試合の出場選手選考の際の指標となる本件決定直近のFISポイントリストによれば、A選手が198ポイント、申立人が166ポイントとなっており、最もFISポイントが高かった日本人選手は、A選手であった(乙2)。

 

(7) 被申立人がFISポイントリストを基準に本件試合の選手選考を進めていることに不満を抱いた申立人は、本件試合の出場権については同試合の出場枠を自ら獲得した選手に優先的に割り当てられるべきであると主張した。そのため、2013年9月25日に申立人、A選手、及び、被申立人の関係者らで協議がなされ、申立人は被申立人から申立人後援会に十分説明を行い理解を得るなどの希望を述べたうえで、一旦選手としてのワールドカップ出場は断念してコーチとなることを了解した。

 

(8) しかし、その後、再度申立人が、本件試合の出場権は出場枠を獲得した選手に優先的に割り当てられるべきであると主張したので、被申立人はFISポイントのみに基づきワールドカップ出場選手を判断するのではなく、これまでの競技経験・実績、及び2013年-2014年のワールドカップ出場枠1を日本にもたらした申立人の貢献をも加味して、2013年10月15日に本件決定を下した。

 

(9) 申立人は、被申立人に対し、被申立人会員登録規程第4条4項「前条第1項の会員については、本連盟の決定に対する不服申立は、日本スポーツ仲裁機構の「スポーツ仲裁規則」に従って解決されるものとする。」に基づき、本件決定の取消しを求め、2013年11月1日、スポーツ仲裁の申立てをし、同日、同申立ては受理された。

 

第5 本件スポーツ仲裁パネルの判断

 

1 判断の基準

 

 本件のように国内競技団体が行った決定の取消しが求められた事案について、当機構における過去の仲裁判断では、「日本においてスポーツ競技を統括する国内スポーツ連盟については、その運営に一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は、国内スポーツ連盟の決定を尊重しなければならない。仲裁機関としては、①国内スポーツ連盟の決定がその制定した規則に違反している場合、②規則には違反していないが著しく合理性を欠く場合、③決定に至る手続に瑕疵がある場合、または④国内スポーツ連盟の制定した規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠く場合において、それを取り消すことができると解すべきである」との判断基準が示されている。本件スポーツ仲裁パネルも基本的にこの基準が妥当であると考える。

 よって、本件においても、上記基準に基づき判断する。

 本件では、上記①の本件決定が被申立人の制定した規則に違反しているとして取消を求められているものではなく、上記③の決定に至る手続に瑕疵があるとして取消を求められているものでも、また上記④の被申立人の制定した規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠くとして取消を求められているものでもない。したがって、上記②の本件決定が著しく合理性を欠くか否かについて判断する。

 

2 争点

 

 申立人は、本件決定に対し、前年度ワールドカップにおいて日本の出場枠を確保した選手が当年度のワールドカップ出場につき優先権が与えられるべきであり、FISポイントのみを選考基準としてなされた本件決定は著しく合理性を欠くと主張し、被申立人はワールドカップにおいて好成績を収められる選手を出場させるとの観点から、直近のFISポイントを基準に上位の者に出場権を認めることも合理性が認められるうえ、さらに本件決定ではFISポイントだけではなく、これまでの競技経験・実績、及び本件試合における出場枠1を日本にもたらした申立人の貢献をも加味しているので、合理的であると主張した(争点①)。

 また、申立人は、B氏は申立人に本件試合の優先的出場権がある旨の通知(以下「B通知」という。)をしたが、同通知は被申立人の機関決定に基づくものにほかならず、当該決定を変更する本件決定は著しく合理性を欠くと主張し、被申立人はB通知のような機関決定は存在していないと主張した(争点②)。

 更に、申立人は、仮にB通知のような機関決定がなかったとしても、B通知によって自らに本件試合の優先的出場権があると誤解した状態でFIS公認オーストラリア大会に出場を余儀なくされ、不公正な競争環境に置かれたのであるから、その結果であるFISポイントを基準とする本件決定は著しく合理性を欠くと主張し、被申立人は誤解を招く通知であったことは認めるものの本件決定そのものは合理的であると主張した(争点③)。

 

3 争点に対する判断

 

(1) 争点①について

 

 まず、申立人は、前年度ワールドカップにおいて日本の出場枠を確保した選手が当年度のワールドカップ出場につき優先権が与えられるべきであり、FISポイントのみを選考基準としてなされた本件決定は著しく合理性を欠くと主張するが、ワールドカップ出場選手は、出場枠獲得に必要な前年度のFISポイントを獲得した選手にしなければならないという明文の定めは存在しない。また、被申立人におけるワールドカップの代表選手選考の目的や方法をみると、ワールドカップには好成績を収められる実力のある選手を出場させるという目的自体には十分合理性が認められ、そのために当該ワールドカップエントリー直前の時点でのFISポイントを基準にその上位の者を出場させるという方法にも一応の合理性が認められる。

 そして、証拠(乙1、乙7、乙8の2)によれば、被申立人においては、少なくとも2011年からワールドカップのスキークロス競技の選手選考基準として、第一の優先順位として強化指定選手を挙げ、第二の優先順位としてFISポイント上位者を挙げており、FISポイントが重要な選考基準とされていることが認められる。この点、申立人も2011年から少なくとも2013年6月に行われたスキークロス競技の選手の強化合宿における時点まで、被申立人のワールドカップの代表選手の選考基準についてその合理性にとくに異議を唱えていないことが認められる。本件決定において被申立人は、FISポイントを基準にその上位の者を優先させるという従前からの選考基準を中心としつつも、FISポイント上位者であるA選手のみならず申立人にも第2戦の出場機会を認めることで、第3戦以降の出場権を両者の成績によって見極めようとしており、これはFISポイントのみならず、これまでの申立人の競技経験・実績、及び本件試合における出場枠1を日本にもたらした貢献をも考慮して、より慎重に好成績を収められる可能性の高い選手に本件試合の出場権を認めようと検討したものと認められる。したがって、本件決定は、好成績を収められる可能性の高い選手を出場させようという目的のために、2013年10月15日時点における直近のFISポイントを重要な基準としつつも、申立人の競技経験、実績等を考慮してより慎重に判断したものにほかならず、被申立人の裁量権の範囲を超えて著しく合理性を欠くということはできない。

 

(2) 争点②について

 

 証拠によれば、被申立人フリースタイル部の強化委員でありスキークロスコーチでもあったB氏は申立人に対し、「ワールドカップの出場権において、枠を獲得したXさんに枠使用の優先権があります。」と通知している事実(B通知)が認められる(甲1)。

 この点、被申立人フリースタイル部長D氏の証言によれば、フリースタイル種目における被申立人の意思決定は、毎年3月にスキークロス種目強化委員会において強化計画が協議されることになっており、当該委員会において選考基準及び同基準に基づき選考した選手を確認・起案し、フリースタイル部長に上程し、同部長の承認に基づき決定することにより機関決定を行うものとしている。ところで、被申立人内において、申立人に対し本件試合について優先的出場権を認める旨の意思決定がなされた証拠は存在しない。また、LINEによる連絡についても、選手選考に関与するコーチとして個人的見解を述べたことの適否は別として、係る連絡をもって、被申立人フリースタイル部の機関決定がなされたことの証拠と解することは困難である。

 したがって、被申立人が申立人に本件試合の優先的出場権を与える旨の決定をした事実を認定することはできず、申立人が主張するように本件決定は既になされた決定を不合理に変更したものとはいえないので、申立人の主張に理由はない。

 

(3) 争点③について

 

 申立人は、B通知を受けたことにより、自身に本件試合の優先的出場権があるものと誤解したため、2013年8月に開催されたオーストラリアでのFIS公認試合に十分な体制で臨むことができず、そのような不公正な競争環境に置かれた試合により得られたFISポイントを基準に本件試合の優先的出場権を判断するのは著しく不合理であると主張する。

 確かに、B通知を受け取った申立人としては、本件試合に優先的に出場するために2013年8月に開催されたオーストラリアでのFIS公認試合が極めて重要な試合になるとの認識を持てなかったことにつき同情すべき点はあり、被申立人における選手選考基準の公表及びその通知に関して十分ではない点があったことは否定できない。

 しかし、仮に上記のような十分ではない点があったとしても、より好成績を収められる可能性の高い選手を選考するために、本件決定の直前の客観的指標、すなわちFISポイントを重要な基準とすることはなお合理的というべきであるし、被申立人としても申立人の競技経験、実績、本件試合における出場枠1を日本にもたらした貢献等を考慮して、FISポイントを基準とするならば出場権が認められない申立人にも出場機会を認めていることを考慮すれば、B通知により誤解した申立人が受けた不利益は実質的には補完されていると考えられ、本件決定の合理性を失わせるものとはいえない。 よって、申立人に誤解を与えるような言動があったとしても、ワールドカップエントリー直前の時点でのFISポイントを基準にその上位の者を出場させることを基本に、申立人の出場可能性にも一応の配慮をした本件決定が著しく合理性を欠くとまではいえない。

 

第6 結論

 以上に述べたことから、本件スポーツ仲裁パネルは主文のとおり判断する。

以上

2013年11月10日

スポーツ仲裁パネル

仲裁人 川 添  丈

仲裁人 神谷 宗之介

仲裁人 合田 雄治郎

仲裁地:東京

 

(別紙)

仲裁手続の経過

1. 2013年11月1日、申立人は、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(以下「機構」という。)に対し、申立書及び書証(別紙1・2、参考1・2、会員登録規程)を提出し、本件仲裁を申立てた。

 同日、機構は、スポーツ仲裁規則(以下「規則」という。)第15条1項に定める確認を行った上、同条項に基づき申立人の仲裁申立てを受理した。また、機構は、事態の緊急性に鑑み極めて迅速に紛争を解決する必要があると判断し、規則第50条1項及び3項に基づき、本件を緊急仲裁手続によること、及び仲裁パネルを3名とすることも併せて決定した。また、機構は、川添丈を仲裁人長に選定し、「仲裁人就任のお願い」を送付した。

2. 同月2日、川添丈は、仲裁人就任を承諾し、仲裁人長となった。

3. 同月6日、機構は、神谷宗之介及び合田雄治郎を仲裁人に選定し、「仲裁人就任のお願い」を送付した。

 同日、神谷宗之介及び合田雄治郎は、仲裁人就任を承諾し、本件スポーツ仲裁パネルが構成された。

 同日、本件スポーツ仲裁パネルは、審問開催日、開催場所、審問出席者及び証人の申請について、「スポーツ仲裁パネル決定(1)」を行った。

4. 同月7日、被申立人は、機構に対し、委任状、及び証人尋問申請書を提出した。

 同日、本件スポーツ仲裁パネルは、被申立人の承認申請を認めること、申立人に対し当事者尋問を行うこと及び補佐人申請について、「スポーツ仲裁パネル決定(2)」を行った。

5. 同月8日、被申立人は、機構に対し、答弁書、証拠説明書、及び書証(乙第1号証~第5号証)を提出した。

 同日、申立人は、機構に対し、委任状、補佐人申請書、証拠説明書、及び書証(甲第1号証)を提出した。

 同日、本件スポーツ仲裁パネルは、申立人の補佐人申請を認めることについて、「スポーツ仲裁パネル決定(3)」を行った。

6. 同月10日、東京において審問が開催された。冒頭、本件スポーツ仲裁パネルから両当事者に主張内容の確認がなされた後、当事者尋問、証人尋問及び最終弁論がなされた。審問の中で申立人から、書証(甲第2号証、第3号証)が提出され、被申立人から書証(乙第6号証~第8号証)が提出された。

 本件スポーツ仲裁パネルは、審問終了後、審理の終結を決定した。

 同日、本件スポーツ仲裁パネルは、規則第50条5項に従い、仲裁判断を両当事者に通知した。

以上

以上は、仲裁判断の謄本である。

公益財団法人日本スポーツ仲裁機構

代表理事(機構長) 道垣内 正人






仲裁判断の骨子

仲 裁 判 断 の 骨 子
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
JSAA-AP-2013-023

申立人         X

申立人代理人  弁護士 根本 良介

被申立人        公益財団法人全日本スキー連盟

被申立人代理人 弁護士 五十嵐 敦

         同  大久保 和樹

主   文

本件スポーツ仲裁パネルは次のとおり判断する。

(1)申立人の請求をいずれも棄却する。

(2)申立料金5万円は、申立人の負担とする。

 本件は、緊急仲裁手続であるので、スポーツ仲裁規則(以下「規則」という。)第50条第5項に基づき、以下に理由の骨子を示し、規則第44条に基づく仲裁判断は、後日作成し、申立人及び被申立人に送付する。

理由の骨子

 本件は、被申立人が2013年10月15日付「2013/2014シーズンのオリンピック出場枠選考期間内のWC男子出場選考について」と題する書面において、(1)12月に行われる第1戦(CAN)の出場権はA選手、第2戦(CAN)の出場権は申立人にあるものとする、(2)第3戦以降の出場権は、第1戦、第2戦のレースで、上位の順位を獲得したものが得るものとする、(3)上記WCについては怪我等により優先権を持っている選手が出場しない場合は、FISポイント上位選手が出場権を得るものとする、との決定(以下「本件決定」という。)がなされたことに対し、スキークロス選手である申立人が本件決定の取消を求めるとともに、ワールドカップ第1戦から第8戦(以下総称して「本件試合」という。)につき申立人が優先して出場する権利があることの確認を求めた事案である。

 このように国内競技団体が行った決定の取消しが求められた事案について、当機構における過去の仲裁判断では、「日本においてスポーツ競技を統括する国内スポーツ連盟については、その運営に一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は、国内スポーツ連盟の決定を尊重しなければならない。仲裁機関としては、①国内スポーツ連盟の決定がその制定した規則に違反している場合、②規則には違反していないが著しく合理性を欠く場合、③決定に至る手続に瑕疵がある場合、または④国内スポーツ連盟の制定した規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠く場合において、それを取り消すことができると解すべきである」との判断基準が示されている。本件スポーツ仲裁パネルも基本的にこの基準が妥当であると考える。

 この点、申立人は、前年度ワールドカップにおいて日本の出場枠を確保した選手が当年度のワールドカップ出場につき優先権が与えられるべきであり、国際スキー連盟(International Ski Federation 以下「FIS」という。)が定めるポイント(以下「FISポイント」という。)のみを選考基準として為された本件決定は著しく合理性を欠くと主張する。また、被申立人フリースタイル部スキークロスコーチBは、申立人に本件試合の優先的出場権がある旨の通知(以下「B通知」という。)をしたが、同通知は被申立人の機関決定に基づくものにほかならず、当該決定を変更する本件決定は著しく合理性を欠くと主張する。更に、申立人は、仮にB通知のような機関決定がなかったとしても、選考基準につき選手に誤解を招く通知のもとFIS公認オーストラリア大会に出場を余儀なくされた申立人は不公正な競争環境に置かれたとして、本件決定は著しく合理性を欠くと主張する。

 しかし、ワールドカップ出場選手は、出場枠獲得に必要な前年度のFISポイントを獲得した選手にしなければならないという明文の定めは存在せず、また当該ワールドカップエントリー直前の時点でのFISポイントを基準にその上位の者を出場させるという方法にも一応の合理性が認められることからすれば、本件決定が著しく合理性を欠くとまではいえない。また、申立人に本件試合の優先的出場権があるという決定が2013年8月に被申立人によってなされたとの証拠は認められず、このような決定がなされたことを前提とする申立人の主張もこれを認めることはできない。

 よって、申立人に誤解を与えるような言動があったとしても、ワールドカップエントリー直前の時点でのFISポイントを基準にその上位の者を出場させることを基本に、申立人の参加可能性にも一応の配慮をした本件決定が著しく合理性を欠くとまではいえない。

 以上に述べたことから、本件スポーツ仲裁パネルは主文の通り判断する。

2013年11月10日

スポーツ仲裁パネル

仲裁人 川添  丈

仲裁人 神谷 宗之介

仲裁人 合田 雄治郎

仲裁地:東京都


以上は、仲裁判断の謄本である。
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
代表理事(機構長) 道垣内正人
※申立人等、個人の氏名、地域名はアルファベットに置き換え、各当事者の住所については削除してあります。