仲裁判断 

仲 裁 判 断
一般財団法人日本スポーツ仲裁機構
JSAA-AP-2010-005
仲裁判断
申立人:X
申立人代理人 :弁護士 望月浩一郎
   同   :弁護士 大橋卓生
   同   :弁護士 高松政裕
被申立人:日本障害者バドミントン協会

主 文
1.2010年8月頃に被申立人が行った2010年12月12日から同月19日まで中華人民共和国・広州市で開催される広州2010アジアパラ競技会(以下「本件競技会」という。)におけるバドミントン競技に関し、BMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に申立人を選出しないとの決定が効力を有していないことを確認する。
2.被申立人が申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に選出したことを確認する。
3.申立(3)および(4)を却下する。
4.仲裁費用(申立費用及び申立人代理人らの弁護士費用を含む)は各自の負担とする。

理  由
第1 当事者の求めた仲裁判断
1 申立人は、後記のとおり、2回にわたり申立の変更を行った。その結果、申立人の求めた仲裁判断は、次のとおりとなった。
  • (1) 2010年8月頃に被申立人が行った2010年12月12日から同月19日まで中華人民共和国・広州市で開催される広州2010アジアパラ競技会(以下「本件競技会」という。)におけるバドミントン競技に関し、BMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に申立人を選出しないとの決定(以下「本件決定」という。)が効力を有していないことを確認する。
  • (2) 被申立人が申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に選出したことを確認する。
  • (3) 被申立人は、国際大会における日本代表選手選考のための公正かつ明確な選考基準を定立し、被申立人に登録する各選手に対し、周知せよ。
  • (4) 被申立人は、被申立人の規約に従って総会及び理事会を開催するなど国際大会における日本代表選手選考手続きについてガバナンスを確立せよ。
  • (5) 仲裁費用(申立人代理人らの弁護士費用も含む)は相手方の負担とする。
2 被申立人は、上記申立に対し、(1)及び(2)の申立についてはこれを受け入れる趣旨を述べ、(3)・(4)・(5)の申立については、これを仲裁パネルの判断に委ねたいとする趣旨を述べた。
第2 判断の前提となる事実
1 事案の概要
 本件は、申立人が、本件競技会におけるバドミントン競技に関し、2010年8月頃に被申立人が行ったBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に申立人を選出しないとの決定は不当であるとし、被申立人に対し、同決定を取り消し、申立人を同日本代表に選出することなどを求めたものである。
2 当事者
 申立人は、被申立人に登録している障害者バドミントンの選手であり、国際障害者バドミントン連盟のクラス分けでBMSTU4に属している。申立人は、スポーツ仲裁規則3条2項にいう「競技者」に該当する。
 被申立人は、わが国における障害者バドミントンに関する統一組織として設立された任意団体であり、財団法人日本障害者スポーツ協会の内部組織である日本パラリンピック委員会(以下「JPC」という。)に加盟しており、本件競技会のバドミントン競技につき日本代表選手を選出し、JPCに推薦する権限を有している。被申立人は、スポーツ仲裁規則3条1項5号にいう「競技団体」に該当する。
3 仲裁申立に至る経緯
  • (1) 2010年5月22日・23日に、被申立人は、本件競技会の日本代表を決定する選考合宿を開催した。申立人は、被申立人から2010年度の強化指定選手に指定されており、この選考合宿に参加した。BMSTU4クラスの選手は被申立人を含む4名が参加した。本件競技会のBMSTU4シングルスには2名、BMSTU4/5ダブルス1組(2名)が日本代表として選出されることになっており、この選考合宿では申立人を含む4名でこの代表枠を競うこととなった。
     なお、BMSTU4/5ダブルスとは、BMSTU4クラスとBMSTU5クラスの選手が参加できるクラス混合のダブルスをいう。本件競技会は、BMSTU4のみのダブルスはなく、BMSTU4/5ダブルスで行われることが決まっていた。日本では、被申立人に登録した選手の中で、BMSTU5クラスの選手は一人もおらず、BMSTU4のメンバーから代表を選出することになっていた。
  • (2) 申立人は、選考合宿中、被申立人が指定したシングルス・ダブルスの全試合に出場し(なお、この選考合宿には健常者も参加しており、申立人は健常者とも試合が組まれていた)、対障害者との試合はシングルス・ダブルスとも全勝した。
  • (3) 選考合宿中、被申立人の幹部及びコーチ陣が選考会議を行ったところ、申立人が本件競技会のBMSTU4シングルス日本代表及びBMSTU4/5ダブルス日本代表に決定したことを、後日、申立人は同会議に参加していた複数のコーチから伝え聞いた。
  • (4) 2010年7月18日、被申立人は、出場種目の発表は後日行うこととして、本件競技会の日本代表選手を、メールを通して各選手に発表した。BMSTU4クラスの日本代表選手としては、申立人を含む3名が選出された。
  • (5) 2010年8月15日、被申立人は、メールを通して各選手に各出場種目の発表を行った。この発表によれば、BMSTU4シングルス男子の日本代表は申立人とされていたが、BMSTU4/5ダブルス男子の日本代表は申立人以外の2選手とされており、申立人はダブルス男子の日本代表に選出されなかったことを知った。
  • (6) その後、申立人は、申立代理人を通じて被申立人に対し説明を求めたが、納得ある説明が得られなかった。
第3 仲裁手続の経過及び両当事者の主張
1 2010年9月13日(月曜日)
 申立人は、一般財団法人日本スポーツ仲裁機構(以下、「機構」という。)に対し、下記のとおりの仲裁判断を求める趣旨の同日付「仲裁申立書」、「証拠説明書」、「甲第1号証」から「甲第14号証」及び「委任状」を提出して、本件仲裁を申立てた。
  • (1) 被申立人が行った本件決定を取り消す
  • (2) 被申立人は申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU4/5ダブルス男子日本代表に選出せよ
  • (3)仲裁費用は相手方の負担とする
 その申立を基礎づける申立人の主張は、主に、①被申立人には、文書化された具体的な代表選考基準は存在しないところ、過去2回のアジアパラ競技会の代表選考では、前年の日本選手権大会の成績と選考合宿の成績を基準に選考していた、②申立人の過去の成績は優秀であった、③申立人には持病があるが、その旨は被申立人に報告しており、かつ、本件競技会に参加することにつき何ら問題はない、という点であった。
 機構は、スポーツ仲裁規則15条1項に定める確認を行った上で、申立人の仲裁申立てを受理した。
 また、機構は同日、本件事案においては事態の緊急性に鑑み極めて迅速に紛争を解決する必要があると判断した。したがって、同規則50条に定める緊急仲裁手続によることを決定し、また、特段の事情があると認め、3名の仲裁人により仲裁パネルを構成することを決定した。
2 2010年9月14日(火曜日)
 申立人は、「御連絡」を機構に提出し、仲裁人選任を機構に任せる旨通知した。
 機構は、申立人選定仲裁人として、山内貴博を選定した。
3 2010年9月15日(水曜日)
 山内貴博は仲裁人就任を受諾した。
4 2010年9月16日(木曜日)
 被申立人が仲裁人選定期限までに仲裁人選定をしなかったので、スポーツ仲裁規則22条及び50条に基づき、機構が福田弥夫を仲裁人として選定し、同人は同日仲裁人就任を受諾した。
5 2010年9月17日(金曜日)
 仲裁人両名は、第三仲裁人選定を機構に一任すると通知した。同日、機構は第三仲裁人として早川眞一郎を選定し、同人が同日仲裁人就任を受諾したため、本件スポーツ仲裁パネルが構成された。
6 2010年9月18日(土曜日)
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、以下の3個の申立を追加することの許可を求める同日付「仲裁申立変更許可申請書」を提出した。
  • (3) 被申立人は、国際大会における日本代表選手選考のための公正かつ明確な選考基準を定立し、被申立人に登録する各選手に対し、周知せよ。
  • (4) 被申立人は、被申立人の規約に従って総会及び理事会を開催するなど国際大会における日本代表選手選考手続きについてガバナンスを確立せよ
  • (5) 仲裁費用(申立人代理人らの弁護士費用も含む)は相手方の負担とする。
 その申立を基礎づける申立人の主張は、主に、①被申立人には具体的な代表選考の基準が存在せず、②代表選考基準の決定や代表選手の決定をするにあたって、総会や理事会が開催されたことはなく、一部の役員の協議で決定している様子がうかがわれ、③このような状況下では、被申立人が代表選考をやり直しても、再び不明朗な代表選考が繰り返されるにすぎず、将来において申立人のように不利益を被る者が出てくる以上、結局は、本件代表選考と同じことが繰り返されることになり、何ら問題の解決にはならない、という点であった。
7 2010年9月21日(火曜日)
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「証拠説明書」及び「甲第15号証」から「甲第20号証」を提出した。
 スポーツ仲裁パネルは、両当事者に対し、被申立人に対し、同月18日付仲裁申立変更許可申請に対する意見を同月24日までに提出することを求め、あわせて、両当事者に対し、スポーツ仲裁パネルとしては、申請を許可する予定であること、許可した場合には、新たに請求の趣旨に加えられた部分に対する答弁書の提出期限を同月28日とする予定であることを告知する、同日付「スポーツ仲裁パネル決定(1)」を行った。
8 2010年9月23日(木曜日)
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「御連絡」と題する文書を提出した。同「御連絡」には、被申立人から申立人代理人に対する同日付の連絡文書と、これに対する申立人代理人から被申立人への同日付の連絡文書が添付されていた。被申立人の連絡文書には、日本代表の出場種目の変更について関係のある選手に変更の了承を得たこと、被申立人としては、すでに述べたとおり、申立人の出場種目の見直しを行い、BMSTU4/5クラスダブルス男子日本代表への選出を決定したこと、9月27日に「最終エントリーの申し込みを行う予定」であることが記載されていた。これに対する申立人代理人の連絡文書には、本仲裁の申立(1)及び(2)を基本的に受け入れる方針であることは歓迎すると述べつつも、当該決定が合理的な選考基準に基づき、かつ、被申立人の規約に照らして有効性ある選考機関による決定であるかという点について疑念を有していること、その点が明らかになれば、本仲裁の申立(1)及び(2)の取り下げを検討するが、そうでなければ確認請求に変更したうえで仲裁手続を続行する、等と記載されていた。
 また、申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、申立(1)及び(2)を以下のとおりに変更することの許可を求める同日付「仲裁申立変更許可申請書」を提出した。
  • (1) 申立人が行った本件決定が効力を有していないことを確認する
  • (2) 被申立人が申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU4/5シングルス及びダブルス男子日本代表に選出したことを確認する
 また、申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、「証拠説明書」及び「甲第25号証」から「甲第26号証」を提出した。「甲第25号証」及び「甲第26号証」は、同日付「御連絡」と題する文書に添付されていた、被申立人から申立人代理人に対する同日付の連絡文書と、これに対する申立人代理人から被申立人への同日付の連絡文書であった。
9 2010年9月24日(金曜日)
 被申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「答弁書」及び「日本障害者バドミントン協会 平成22年度役員名簿」を提出した。同答弁書には、本件競技会の日本代表選手出場種目選出方法・決定基準に落ち度があったことを認め、被申立人において見直しを行い、同月26日までに再選出を行うとの趣旨が記載されていた。
 スポーツ仲裁パネルは、両当事者に対し、被申立人に対し、同月23日付仲裁申立変更許可申請に対する意見を同月28日までに提出することを求め、同時に、申立人がダブルス男子日本代表に選出されれば、申立人において申立(1)及び(2)の取り下げを検討するよう求める同日付「スポーツ仲裁パネル決定(2)」を行った。
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同月22日付「証拠説明書」及び「甲第21号証の1」から「甲第24号証」並びに同日付「証拠説明書」、「甲第27号証」から「甲第28号証」及び「上申書」を提出した。
 被申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「仲裁申立変更許可申請についての意見書」、「審問日程について」及び「委任状」を提出した。「仲裁申立変更許可申請についての意見書」には、日本代表出場種目の見直しを行った結果、申立人をシングルス・ダブルスへ出場させることを決定したとの趣旨が記載されていた。
10 2010年9月28日(火曜日)
 スポーツ仲裁パネルは、両当事者に対し、「スポーツ仲裁パネル決定(2)」の趣旨を尊重し、合わせて最新の状況を報告するよう求める同日付「スポーツ仲裁パネル決定(3)」及び10月2日午前10時に審問を行うことを告知する「スポーツ仲裁パネル決定(4)」を行った。
11 2010年9月29日(水曜日)
 被申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同月28日付「仲裁申立変更許可申請についての意見書 スポーツ仲裁パネル決定(2)」を提出した。同意見書には、申立人をシングルス、ダブルスの双方へ出場させることを内容とする日本パラリンピック委員会への最終エントリーを同月27日に行ったことが記載されていた。
 また、被申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、「上申書への回答 スポーツ仲裁パネル決定(3)」、「申立人の最終エントリーシート」及び「同意書」を提出した。同「上申書への回答 スポーツ仲裁パネル決定(3)」には、本件決定が効力を失っていること、本件競技会に対する参加選手選考の決定権を被申立人の会長に委ねることにつき、被申立人の役員16人中12人の同意を得ていること等が記載されていた。なお、被申立人の役員16名とは、会長1名、副会長2名、参与5名、理事長1名、理事7名の合計16名を指す。
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「報告書」、「証拠説明書」及び「甲第29号証」を提出した。「報告書」には、申立代理人が財団法人日本障害者スポーツ協会に対し問い合わせた内容が記載されていた。
12 2010年9月30日(木曜日)
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、同日付「証拠説明書」及び「甲第30号証」を提出した。
13 2010年10月2日(土曜日)
 申立人は、スポーツ仲裁パネルに対し、「上申書(2)」を提出した。同上申書は、被申立人による本件競技会に対する代表の変更決定の有効性、特に、役員からの同意書の取得経緯に疑義が残る等の主張が記載されていた。
 午前10時、本件スポーツ仲裁パネルは審問を開始した。申立人側は申立人本人、代理人弁護士望月、同弁護士大橋、同弁護士高松が出席した。被申立人側は代理人理事長Aが出席した。
 スポーツ仲裁パネルは、申立人の同年9月18日付仲裁申立変更許可申請と、同月23日付仲裁申立変更許可申請につき、いずれをも許可するとの決定を行った。その結果、申立人の求める仲裁判断は、上記第1.1記載の請求のとおりとなった。
 スポーツ仲裁パネルが両当事者に対し審問を行った結果、本件競技会に対する参加選手選考の決定権を被申立人の会長に委ねることについて、被申立人が9月28日付「仲裁申立変更許可申請についての意見書 スポーツ仲裁パネル決定(2)」をスポーツ仲裁パネルに提出するまでに、役員12名の同意は口頭では得られていたが、署名・押印済みの同意書は被申立人において入手できていなかったこと、その後、審問開始時までに、合計14名分の同意書が被申立人により入手されたこと、が認められた。
 11時35分、スポーツ仲裁パネルは、手続が仲裁判断に熟すると認めて審理の終結を決定した。
 スポーツ仲裁パネルは、協議を行ったうえで、12時25分、申立人の上記第1.1記載の請求に関する仲裁判断を口頭で告知した。
第4 判断の理由
1 請求(1)及び(2)について
 両当事者から提出された主張書面及び証拠、並びに審問の結果によれば、被申立人の代表が、被申立人の役員16人中、14名の同意をえて、本件決定を取り消し、申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に選出したことが認められる。したがって、申立人の請求(1)及び(2)の事実が確認できる。
 なお、事案の性質に鑑み、申立人の請求(1)(2)の決定について申立人が指摘する手続上の問題点について付言する。被申立人において、代表選考についての具体的な基準が定められていないことは争いがない。そして、代表選考については、できるだけ具体的な基準が定められるべきであるとはいえる。しかし、代表選考は客観的な数値にしたがい自動的に決まる旨の基準があらかじめ定められているような場合であれば格別、このような基準がない場合は、競技団体としては、当該競技に関する専門的見地及び大会で好成績を挙げるための戦略的見地から、記録以外のさまざまな事情、たとえば技術以外の能力、調子、実績、団体競技であれば競技者間の相性等を総合考慮して判断することも、選手選考の性質上必要であると考えられる。ただ、選考過程において、試合結果等の数値を考慮せず恣意的な判断を行う等、競技団体としての専門性を放棄するような裁量を逸脱する判断が行われた場合にのみ、当該代表選考が無効ないし取消しうべきものとなると解するのが相当である。
 本件において、被申立人は、選考合宿の結果等を考慮に入れて、申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に選考したものと認められ、その点に上記のような裁量の逸脱等は存在しない。
 また、被申立人においては、一部の現役の選手が被申立人の役員に就任している等の実態に鑑みると、被申立人の役員の同意をえて会長が選手選考を行うという方法が、平時においても常に適切な代表選考となりうるかについては、慎重な検討が必要であると思われる。しかし、今般、被申立人において、本件決定を取り消し、申立人を本件競技会におけるバドミントン競技のBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表に選出した内部手続については、上部団体に対するエントリーの期限が迫っているという緊急時に行われた手続であることなどに鑑みれば、決定の無効・取消をもたらすようなものとは認められない。
2 請求(3)及び(4)について
 申立人の請求(3)及び(4)については、確かに、公正かつ明確な選考基準が定立され、競技団体内部の管理・運営が適切に行われるべきであることは言うまでもない。
 被申立人は、請求(3)及び(4)の趣旨に沿った対応をする予定である旨を述べる(平成22年9月24日付けの「仲裁申立変更許可申請についての意見書」)。被申立人が、自主的に、公正かつ明確な選考基準を定立し、競技団体として適切な管理・運営を行うようにつとめることは、もとより歓迎すべきことであるが、このような問題は、仲裁に関与した者のみによって決められるべきものではなく、基本的には、競技団体の自治にゆだねられる。スポーツ仲裁パネルは、被申立人が、競技団体の自治の趣旨に沿った適正な手続きによって、これらの改革に取り組むことを期待する。
 しかし、スポーツ仲裁はあくまでもスポーツ競技又はその運営に関して競技団体が行った決定についてなされるものであって、選考基準の公正さ・明確さ、管理・運営の適切さ等は、原則として、問題となった具体的な決定の当否の判断に必要な限りで考慮されるものと解すべきである。したがって、本件のように、選考基準の定立を一般的・抽象的に求める請求や、競技団体内部の管理・運営の改善を一般的・抽象的に求める請求は、スポーツ仲裁になじまず、その申立自体を却下すべきである。
3 請求(5)について
 本件仲裁は、本件競技会におけるバドミントン競技におけるBMSTU 4/5ダブルス男子日本代表選考をやりなおし、申立人を同代表に選任せよとの申立人の要求について、被申立人がこの要求を受け入れるとの意思を仲裁申立前の段階から表明していたにもかかわらず、同選考に基づく最終エントリーの期日が迫っていたこともあって、多角的な視点に立って申立人により申立てられたという側面が強いものと思われる。また、請求(3)及び(4)については、前項に述べたとおり、そもそもスポーツ仲裁になじまないものである。したがって、本件仲裁に関して支出した費用を被申立人に負担させるのは適切ではなく、それぞれ支出した者が負担することが相当である。
第5.結論
以上のことから、主文のとおり判断する。

2010年10月2日
スポーツ仲裁パネル
仲裁人 早川眞一郎
仲裁人 山内貴博
仲裁人 福田弥夫
仲裁地 東京都


以上は、仲裁判断の謄本である。
一般財団法人日本スポーツ仲裁機構
代表理事(機構長) 道垣内正人
※申立人等、個人の氏名、地域名はアルファベットに置き換え、各当事者の住所については削除してあります。

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