トラブルのないスポーツ団体運営のために ガバナンスガイドブック

実践 事例から学びたい!競技者が選手選考の結果に納得しません。選考はどのように行うべきでしょうか?

Xさんは、A競技の春の大会で2位に入賞し、秋の大会で優勝しましたが、A競技選手選考委員会は国際大会の出場者としてXさんを指定せず、春の大会のみに参加して優勝したYさんを指定しました(なお、選考基準は競技者に知らされていません)。Xさんはこの結果に納得がいかず、選考が不公正な方法で行われたのではないかと考えています。A競技選手選考委員会は、どのように選手選考を行うべきだったのでしょうか。
A競技選手選考委員会は、あらかじめ具体的な選考基準を定め、その内容を事前にXさんら競技者に周知する必要があります。不選考の理由についてXさんから問い合わせがあれば、誠意をもってその説明に応じることも求められます。また、選考に対する不服申立手続を整備することも望まれます。
選考基準の設定 代表選手選考の重大性

オリンピックやアジア大会のような国際的な大会に出場することは競技者にとっての夢であり、そのための代表選手選考は、競技者のみならず、国民にとっても関心の高い事項となっています。このことから、権威ある大会にどの競技者を出場させるかという選択には、大きな意義と責任が伴います。選考が不正な方法で行われてしまうと、競技者の意欲を削ぐだけでなく、選考を行ったスポーツ団体への信頼が低下し、そのスポーツの振興を損なうことにもなりかねません。したがって、代表選手選考は、公平で透明性の高い方法によって公正に実施されることが不可欠です。

具体的かつ公平な選考基準の決定

代表選手の選考を委ねられたスポーツ団体は、まず選考人数、選考期間、選考の方法、その他選考において考慮すべき要素(対象となる競技者の資格や範囲、選考対象となる大会における成績・記録の指標など)を明確にした選考基準を定めることになります。その際には、基準として掲げた要素が適切かどうか、選考方法に合理性があるかどうかを十分に検討し、必要に応じて弁護士などの第三者からも意見を求め、より公平な選考基準となるよう配慮する必要があります。
点数制の競技やチーム競技などでは、タイム等を競う他の競技と比べ、具体的な選考基準の設定が困難であるため、評価者の裁量が必然的に広くなる傾向があります。このような競技では、評価における説明責任を果たすためにも、裁量に際して考慮すべき要素や考慮の方法を具体的に規定するなどして、偏った判断が行われる余地をできる限り排除することが求められます。

選考基準の周知を

設定した選考基準は、あらかじめ配布するなどして競技者やコーチ、監督など関係者に周知するとともに、基準に修正や変更があればすみやかに伝達し、競技者やコーチ、監督など関係者の十分な理解を得る必要があります。その際には、選考基準をスポーツ団体のホームページ上で公開することも考えられます。選考基準が事前に競技者に知らされないと、冒頭の事例のように、代表選手選考に対する不信感や不満を招きかねません。

選考手続の透明性の確保

実際の選考手続では、評価の客観性を保つために、利害関係のない第三者を選考プロセスに関与させることも考えられます。公平な選考基準が設定されていても、その判断がスポーツ団体内部の一部有力者のみに委ねられていては、選考の客観性に疑いが生じかねないからです。また、不選考となった競技者から問い合わせがあれば、誠意をもって選考理由を説明することも大切 です。
選手選考が国民的な関心事項となっている現在、選考を委ねられたスポーツ団体の説明責任もますます増大しています。選考結果の公表と同時に、選考手続や選考の理由について、広報を通じて積極的に説明を行うことも、このような説明責任の一内容といえます。

不服申立手続の設置を

選考結果に関して紛争が生じたときのために、選考過程を見直すことのできるプロセスとしての不服申立手続を設けることが考えられます。このような手続を整備するには、スポーツ団体内部に関連規程を制定し、当該団体と利害関係のない第三者を関与させ、手続の客観性を保つなどの配慮をすることが重要です。

不服申立手続として日本スポーツ仲裁機構(JSAA)を利用する場合は、こちらのページを参照してください。

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